フェンダーカスタムショップの20年

フェンダー社本工場

LEO FENDER

1987年、アメリカ南カリフォルニアにあるフェンダー本社工場の一角で新しいプロジェクトがスタートした。

それは、フェンダーの創業者であるレオ・フェンダーが創造し完成させた技術や理念を正統に継承し、究極のフェンダーギターを世に送り出すためにスタートしたプロジェクトだ。
そのプロジェクトは「フェンダーカスタムショップ」と名づけられ、やがてフェンダーの最高級ブランドとして全世界に認知されるようになり、トップギタリストたちから絶大な信頼を受けるまでの一大事業となった。

フェンダーカスタムショップのエレクトリックギターは、オートメーション化された工場で拡大再生産される合理的で効率的な「製品」ではなく、マスタービルダーと呼ばれるフェンダー最上級の職人を筆頭に、熟練したスタッフたちの手によって1本1本丁寧に作り上げられる「楽器」であることが絶対条件である。

さらに、エレクトリックギターの素材の大部分は木材である。この木材自身がギターの鳴りを決定付ける最大のファクターであることは周知のことだろう。天然の良質な素材を調達し、選び、削り、磨き上げることが、エレクトリックギターの品質を決定づける。ビジネスにおけるグローバルスタンダードといった戦略とは相反する職人たちのこだわりが、数値化できない「価値」として認められ、フェンダーカスタムショップから送り出される「楽器」は世界中から歓迎されている。

エリック・クラプトン、ジェフ・ベック、デヴィッド・ギルモアなど名だたるギタリストたちがフェンダーブランドを手にする大きな理由は「自分の欲しいサウンドが出せること」だという。
フェンダーの考える「素晴らしい楽器」の定義は、「いかにプレイヤー自身の表現力を追求できるか」といった点である。言葉を換えていうなら「感じたままに、そして信じるがままにプレイできるものであるべき」これがフェンダーの考える「エレクトリックギターの理想の姿である。その理想への努力は惜しまれない。彼らは技術を磨き続け、さらに新しいチャレンジと葛藤を繰り返す。その日々の連続から、気が付けば20年という時が流れた。もちろん、これはゴールではない。
この20年の出来事は、日々の努力や地味で丁寧な仕事の積み重ねから生まれた事実である。

ギターリスト写真

グローバリズムや成果主義もアメリカの生み出した企業文化であるが、フェンダーカスタムショップのようにこだわりを貫く企業文化も、実にアメリカ的だともいえる。

フェンダーは古き良きアメリカの文化を正統に受け継いでいる企業かも知れない。音を追求する頑なまでのこだわりは、コストパフォーマンスや企業スキームといった概念を超越し、純粋に音楽への愛に満ちていく。

その幸福の20年、音楽に対する無償の愛が、極上の道具となってアーティストの手に渡り、、そして彼らのプレイは世界中から賞賛される。 フェンダーカスタムショップが愛される理由、それはアーティストの才能を最大限に発揮できる道具を作り続けている姿勢、態度への愛だと言えるのではないだろうか。